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胆石症センター

胆石症センター長 谷 博樹

胆石症センターは、急性胆道炎の緊急治療が主な役割であり、地域の急性期医療の一端を担うものと日夜診療に励んでいます。
また肝臓がんや胆道がん、膵がんなど悪性腫瘍に対しても精細に診断し、安全性と根治性の両面を追求した治療を行っています。
ここでは、胆石症と急性胆道炎、また肝胆膵がんについて、病態と検査、治療などを説明し、白十字病院での診療実績を提示します。

胆石症と急性胆道炎について

胆石症は、若年から超高齢者まで幅広くみられます。腹痛や背部痛が主な症状ですが、急性胆道炎(胆管炎・胆のう炎)を起こし、重症化すると死亡する危険もあり、早期に適正な診断と治療を行う必要があります。
胆石は、肝臓でつくられる胆汁が固まったもので、胆汁が存在する胆管か胆のうに発生します。3cmを超える大きなものから、砂や泥の様に小さなものまで、大きさは様々です。
胆石の治療は、結石が存在する場所が、胆管か胆嚢かで異なります。診断は、血液や超音波 (エコー)、CT、MRIなど、身体に負担が少ない検査を先ず行います。胆管と胆嚢の両方に結石が存在する場合は、一般的に胆管結石治療を優先します。
胆管結石治療は、内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)を利用した内視鏡的治療を第一に行います。患者さんの負担が少ない低侵襲治療であり、90歳以上の超高齢者も含めて安全に配慮しながら積極的に取り組んでいます。胆管の出口である十二指腸乳頭括約筋に切開(EST)やバルーン拡張(EPBD)を加え、結石を破砕除去し、ステント留置(EBS)を行います。
胆のう結石治療は、手術による胆のう摘出術であり、ほぼ全例に腹腔鏡手術を行っています。手術後の看護も含めて低侵襲治療を実践しています。クリニカルバスを使用することで標準的医療を安定して提供する一方、年齢や全身状態に応じた個別の最適な医療を提供しています。またチーム医療を実践し、より安全な医療環境の提供が出来るように努力しています。

ERCPを利用した内視鏡的治療

胆道や膵臓にはさまざまな病気が起こります。胆管や膵管に結石や腫瘍ができて、胆汁や膵液の流れが悪くなると、胆管炎や膵炎が起きて腹痛や黄疸、発熱などの症状が現れます。血液検査や超音波、CT、MRl検査を行い、胆道や膵臓の病気が疑われ、原因が同定できないときに、詳しく調べる検査法としてERCPが必要になります。
ERCPは、内視鏡を十二指腸まで挿入し、胆管と膵管のX線造影を行う検査です。肝臓でつくられた胆汁は胆管を通り、膵臓でつくられた膵液は膵管を通り、十二指腸に送り出され食物と混ざります。胆管と膵管の共通の出口は十二指腸乳頭と呼ばれ、ここからチューブを挿入し造影剤を注入し、X線で管の形状や結石を映し出し、詳しく調べる検査法です。狭いところ(狭窄)や結石が確認された場合は、引き続きガイドワイヤーを深部に送り込み、内視鏡的治療を行います。胆汁や膵液の細胞検査や組織検査も可能です。狭窄を確認したときは、チューブ(ステント)を通して流れを改善させ、結石を確認したときは、破砕や除去を行うなど、内視鏡的治療を引き続き行うことが可能です。

白十字病院のERCP症例

図5に白十字病院のERCP数を示しました。ERCPは内視鏡を用いた検査ですが、近年は主に治療を目的として行われます。とくに超高齢者においては、1回の治療時間は極力短くして、その代わりに治療回数を分散して、負担を最小にして安全性を高めるように努めています。いずれも右肩上がりの増多傾向を示し、H29年度は336例で最多になりました。図6にERCP症例の年齢分布を示しました。23歳から103歳まで、平均は75.8歳、棒グラフは80歳台が最も多く188例、90歳以上は71例、100歳以上は5例であり、何れも安全に治療を完遂しています。

検査・治療の手順

のどに麻酔をかけるために、麻酔ゼリーを3分ほど口に含み、その後別の麻酔液を噴霧します。苦痛を和らげるための鎮静薬や、腸の動きを止める鎮痙剤を注射します。左を下にして横になり、口から内視鏡を挿入して食道、胃、十二指腸へと進めます。その後うつ伏せになり、乳頭から胆管や膵管に造影剤を注入してX線撮影を行います。乳頭の開口は通常一つであり、チューブ操作により胆管と膵管にそれぞれ入れ分けます。個人により胆管や膵管の形はさまざまであり、どうしても入らない場合もあります。検査にかかる時間は平均で約30分ですが、検査・治療が難しい場合や手順が複雑な場合は1時間におよぶこともあります。1時間を過ぎる場合は、検査・治療は中止し後日改めて行うか、別の方法に切り替えることも検討します。

EPBDとESTについて

ERCPで詳しく調べて、胆管や膵管に結石や狭窄(せまいところ)が確認された場合は、引き続き細胞組織検査や治療を行う必要があります。乳頭は括約筋で締められ、細く狭い構造であり、結石を取り除いたり処置用の太いカテーテルを挿入することが出来ません。このときに乳頭を拡張するか切開して、次の検査や治療を可能な状態にする方法が、EPBDやESTです。

EPBDとESTの適応と方法

EPBDとESTは、いずれもERCP用カテーテルを用い乳頭から胆管にガイドワイヤーを通し、EPBDは拡張用バルーンカテーテルを用い拡張し、ESTはパピロトームと呼ばれる切開ワイヤーの付くカテーテルを用い切開します。結石除去の場合、EPBDは結石径の小さなもの(8mm未満)に、ESTは大きなもの(8mm 以上)に通常行います。出血のリスクがあるものはEPBDを、膵炎のリスクがあるものはESTを優先するなど、症例に応じて慎重に使い分けています。

検査・治療に伴う偶発症

内視鏡に関連したすべての偶発症発生率は0.057%でした。
前処置による偶発症は466例(0.0037%)、うち死亡例は11例(0.00009%)でした。
ERCPにおけるすべての偶発症は268,922件中1,369件(0.509%)で、診断的ERCPに関連した偶発症は114,823件中1,369件(1.192%)、治療的ERCPでは154,099件中901件(0.585%)でした。
偶発症には、急性膵炎や消化管穿孔、急性胆道炎、出血、ショック、呼吸抑制、誤嚥性肺炎などがあります。最も頻度が高く重篤化する危険があるものは急性膵炎であり、ERCP症例の0.4%に認められました。(日本内視鏡学会による「消化器内視鏡関連の偶発症に関する第5回全国調査報告」2003年~2007年)
のど麻酔や鎮静剤、鎮痙剤の使用を前処置といい、まれにショックなど重症の副作用が起きます。検査で乳頭にチューブを挿入したり、バルーン拡張(EPBD)や切開(EST)を加えたときに、膵管の出口が腫れて膵管内圧が高くなり、膵炎を引き起こすことがあります。膵炎が起きた場合は、数日の絶食点滴治療で治るものがほとんどですが、まれに重症化して集中治療が必要になることがあり、最悪の場合は死亡に至ります。したがって検査は必ず入院で行い、少なくとも検査翌朝まで絶食と点滴が必要です。また胃や十二指腸の入リロは個人により曲がりがつよい場合があり、極めてまれに内視鏡が通過するときに穿孔を起こすことがあります。この場合は緊急手術が必要です。合併症・偶発症が発生した場合は最善の処置を行います。

検査・治療前後の注意
検査前

検査当日は朝から絶食が必要です。定期の飲み薬は、中止が必要な薬を除き、検査当日の朝まで飲んで下さい。検査1時間前からは水分も中止して下さい。

検査後

検査後30分間は鎮静後で転倒の危険があり、ベッド上で安静にします。膵炎や出血などの偶発症に対する注意のため、少なくとも検査翌朝までは絶食、血圧や脈拍、体温測定、血液検査、持続点滴が必要です。医師や看護師の話をよくきいて指示に従って下さい。

退院時には、胆管や膵管にステントが入っている状態か確認して下さい。入っている場合は、必ず再検査や交換が必要です。またステントは途中でつまることがあり、発熱や腹痛がある場合は急ぎ連絡して再診して下さい。ステントが入っていない場合も、結石が再発する可能性があります。発熱や腹痛がある場合は再診して下さい。

代替可能な検査・治療と、行わなかった場合の経過

超音波、CT、MRI検査で原因が同定できないときに詳しく調べる検査がERCPであり、代替可能な検査はなく、引き続き必要な内視鏡的治療を開始できる利点があります。胆管炎の場合は治療しないと重症化して敗血症に至ることがあり極めて危険です。保存的治療で悪化する危険性が高いときに、内視鏡的治療や経皮経肝的ドレナージ(PTBD/PTGBD)、手術が必要になります。PTBD/PTGBDは腹部表面から胆管を穿刺する方法で、出血や腹膜炎を合併する可能性があり、チューブがお腹から出た状態で長期入院が必要になる問題があります。手術が最終的に必要な場合もありますが、体に対する負担が最も大きく、全身状態が不良のときなどは内視鏡的治療やPTBD/PTGBDを優先します。
胆管の結石や狭窄の治療は、内視鏡的治療以外に経皮経肝的治療や手術があります。内視鏡的治療は、体表にきずを作らず、全身への負担が少なく、回復も早く、再発時の治療も可能などの利点があり、中心的な役割を担っています。一方で乳頭から胆管に到達し得ない場合は内視鏡的に治療できず、経皮経肝的治療が必要になることがあります。また結石が大きく多数の場合は、内視鏡的治療が長時間繰り返し必要になることもあり、手術の方で負担がむしろ軽い場合もあります。症例に応じて適切な治療を、話し合い検討します。
胆管や膵管の結石や腫瘍は、胆管炎や膵炎を引き起こし、腹痛や黄疸、発熱などの症状が現れます。胆管炎や膵炎は重症化すると生命を脅かす危険な病態です。検査や治療を行わない選択は常に可能ですが、重症化して危険な状態に陥ることを覚悟する必要があります。

胆のうと胆石

胆のうは、右上腹部の肝臓下面にある、洋ナシ型で袋状の臓器です。肝臓でつくられた胆汁を貯蔵し濃縮させて、食事(特に脂肪分)をとると収縮し、胆汁を胆管経由で十二指腸まで送り出します。
胆汁中に含まれるコレステロールやビリルビンが、脂質代謝異常や細菌感染、流出障害など様々な成因により結晶化したものが胆石です。粒子の小さなものは胆砂や胆泥と呼ばれ、形のないものもあります。

胆のう摘出術の必要性

胆のうが収縮したときに、胆石が胆汁の流れる路をふさぐと、上腹部痛(胃部や右季助部)や背部痛の発作を起こします。悪化して細菌感染が加わると急性胆のう炎になり、つよい痛みと発熱を伴います。
症状が全くない場合は様子をみることが多いのですが、痛みを繰り返したり、胆嚢炎を起こした場合は、胆のう摘出術が必要になります。また超音波検査などで胆嚢内にポリープが発見され、大きさが1cmを超えるような場合も胆のう摘出術の対象になります。

手術の方法

胆のう摘出術は、結石やポリープを含む胆のう全部を摘出する手術です。結石やポリープだけ摘出し胆のうを残しても必ず再発しますし、胆のう炎を合併する危険性が高いため、胆のう全部を摘出する必要があります。胆管とつながる胆嚢管と、胆のう血管1-2本をはがしクリップや糸で止めて切り、肝臓と付着している面をはがせば切離されます。腹腔鏡(お腹の内臓を観察する内視鏡)を用いた手術と、開腹手術があります。

① 腹腔鏡下胆のう摘出術

おへそやおへその近くを小開腹して腹腔鏡を挿入し観察しながら胆のうを摘出する方法です。ほかに鉗子や電気メスを挿入するために3箇所小切開を追加する4孔式が標準的な手術法です。炎症が軽度の方やポリープの方には1箇所のみ切開する単孔式を選択することも可能です。単孔式で困難な場合は切開を適宜追加します。麻酔は全身麻酔で行います。手術時間は1-2時間で、炎症が高度の場合は長くなります。入院期間は術後2-7日間です。合併症が認められた場合は長くなります。

② 開腹手術

炎症がきわめて高度な場合、全身状態が不良の場合、以前に腹部手術を受けていて癒着が高度な場合、出血が多量になり止血が困難な場合、周囲臓器が炎症に巻き込まれ修復が必要な場合、胆管結石の内視鏡的治療が困難な場合、このようなときは安全を最優先にして、お腹の切開を拡げ、開腹手術に移行して胆嚢を摘出します。

手術に伴う合併症

合併症は、偶発症とも言われ、予測ができず少ない頻度で発生します。可能な限り早期に発見して、早期に治療を開始するように、最大限努めます。

1. 出血(術中術後)…開腹止血を要した例 0.6%
2. 胆管損傷…0.6%、胆管狭窄…0.04%
3. 他臓器損傷…0.3%
4. 感染(創感染、腹腔内膿瘍、肺炎、尿路感染ほか)
5. 血栓塞栓症(脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓症ほか)…日鏡外会誌17巻5号(2012年10月)

胆嚢摘出術は、胆嚢の炎症や周囲臓器との癒着が軽い場合には安全に短時間で終わりますが、炎症が高度の場合には一転して非常に難しい手術となります。近接する胆管や十二指腸など他の臓器まで炎症や癒着がおよぶ場合は損傷の危険があります。輸血が必要になることは稀ですが、出血量によっては輸血が必要になる可能性があります。輸血は副作用や血液感染症の危険があり、不必要な輸血は決して行いません。合併症・偶発症が発生した場合は最善の処置を行います。その際の診療は通常の保険診療となります。

手術後の注意

胆のうは胆汁の濃縮貯蔵が主な役割で、手術が必要な場合の多くはその働きも失われているため、摘出して身体に影響が出ることは殆どありません。それでも脂肪分の多い食事や飲酒で、嘔吐や腹痛、下痢、肝機能障害が出ることがあり注意が必要です。
また摘出した胆のうの病理組織検査で、胆のうがんが発見されることがあります(0.3~ 1%)。 癌の進行度によっては、手術や抗がん剤治療など追加治療について検討します。

代替可能な治療と、治療を行わなかった場合の経過

薬物(ウルソデオキシコール酸)を用いた経口溶解療法は、15mm径以下の石灰化のないコレステロル系石数個に対して適応があります。しかし完全溶解率は20%以下にとどまること、再発率が高く薬をのみ続ける必要があること、痛みや炎症を繰り返すほど手術が困難であり合併症の危険が大きいこと、以上から現時点では腹腔鏡下胆のう摘出術が第一選択治療です。急性胆のう炎の場合は、全身状態が不良ならば、保存的治療や経皮経肝的ドレナージ(PTGBD)を行いますが、姑息的であり根治的治療ではありません。ポリープの場合は、経過観察する選択肢があります。癌であった場合は、進行や転移する可能性があります。

白十字病院の胆のう結石・急性胆のう炎症例

胆のう結石・急性胆のう炎の治療法は、腹腔鏡下胆のう摘出術が中心となります。図11に手術症例数を示しました。腹腔鏡下胆のう摘出術は年間100例前後です。開腹胆のう摘出術には開腹移行例も含まれ、炎症や癒着が極めて高度な症例に限られます。当院での腹腔鏡手術の比率は、84~99%でした。図12に胆のう摘出術症例の年齢分布を示しました。15歳から98歳まで、平均は66.3歳、棒グラフは70歳台が最も多く91例、90歳以上は6例、100歳以上は0例でした。手術は全身麻酔が必要であり、ERCP症例と比較すると年齢は明らかに若い分布を示しています。胆嚢と総胆管の両方に結石が存在する症例でも、超高齢でリスクの高い症例は、重症化し易い総胆管結石のみを内視鏡的治療して、胆嚢は手術せず様子観察するなど、症例に応じた適切な治療を行っています。

単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術

単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術(single incision laparoscopic cholecystectomy(SILC)の症例を提示しました。従来法が小切開を4箇所加えるのに対し、臍底の1箇所のみを切開しアクセスポートに腹腔鏡と複数の鉗子を挿入して胆嚢を摘出します。傷が臍のみで、治った後は殆ど目立たず、整容面で優れた手術です。近年は女性を中心に、希望される方に行っています。

白十字病院の肝胆膵がん診療

白十字病院では、肝がんや胆道がん、膵がんなど悪性腫瘍に対しても精細に診断し、安全性と根治性の両面を追求した治療を行っています。肝胆膵がんは、非常に悪性度が高く、発見されにくく、発見時にはすでに進行高度である場合が多い特性があります。まずは発見が重要であり、ここから適正な検査を選択し、癌を確実に診断し、更に精細に癌の拡がりを同定して、安全で根治性の高い治療に繋げます。 
図14に肝胆膵がんの手術症例数を示しました。年間11~15例で、肝切除は6~13例、膵切除は3~6例でした。他に手術が適応とならない方には、個人個人に寄り添った治療を、よく話し合って決めます。
積極的に化学療法を行い、疼痛や苦痛などの症状があれば、早期から緩和的治療も行っています。

肝臓がんについて

肝癌は、肝臓発生した原発性肝がんと、他臓器癌から転移した転移性肝がんに大別されます。
原発性肝がんには、肝細胞から発生する肝細胞がん(hepatocellular carcinoma;HCC)、肝内胆管から発生する肝内胆管がん(intrahepatic cholangiocarcinoma)(=胆管細胞ガン(cholangiocellular carcinoma;CCC))混合型や嚢胞腺がん、肝芽腫などがあります。
日本では原発性肝癌の94%が肝細胞癌で多勢を占め、5%が肝内胆管癌、混合型は0.8%です。
癌の部位別死亡率では、男性の第4位、女性の第6位でした(2011年)。

肝細胞がんについて

アジア、アフリカに多く、欧米では少ないがんです。
ウィルス性慢性肝炎や肝硬変を母地として発生することが多く、日本や西欧はC型肝炎、その他アジアやアフリカはB型肝炎が多いとされます。
日本では、男女比は3:1で男性に多く、原因はC型肝炎(80%)が最多で、次はB型肝炎(15%)です。
ほかの原因としては、アルコール性肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、さらに原発性胆汁性肝硬変(PBC)、ウィルソン病、ヘモクロマトーシスがあります。
血流が豊富な腫瘍が多く(高~中分化肝細胞がん)、画像検査で特徴的に描出されます。

肝細胞がんの治療

肝細胞がんの治療は、癌の進行度と肝障害度に応じて決められます。
肝切除は、最も根治性が高い治療法であり、他の治療よりも優先されます。
癌の進行度は、個数や大きさ、脈管侵襲によって決まります。
肝障害度が高い(予備能が悪い)症例は、大量肝切除によって肝不全の発生が増加し、死亡率も高くなります。
肝障害度に応じた切除可能範囲(術式)が、幾つかの基準によって規定されています。肝障害度が高いと、切除範囲は小さくなります。

基準の切除範囲が、必要な切除範囲を下回る場合は、切除適応はない(切除不能)と判断されます。 切除不能例は、穿刺局所療法(ラジオ波凝固療法(RFA)など)や肝動脈化学塞栓療法(TACE)、肝動注化学療法(HAIC)、全身化学療法(ソラフェニブなど)、放射線療法、緩和治療などが、状態に応じて検討されます。

肝内胆管がんについて

肝内胆管から発生し、肝内に腫瘤を形成します。ほとんどが腺癌です。
男女比は3:2で男性に多く、肝硬変を合併することは稀で、正常肝に発生することが多い。
血流は乏しく、画像所見は転移性肝癌と似ています。
肝細胞がんよりも予後は不良です。
リンパ節転移をきたすことが多く、手術例の35%に転移がみられます。
腹膜転移も多くみられます。

肝外胆管がんについて

肝外胆管は、肝側の肝門部領域胆管と、十二指腸側の遠位胆管に分けられます。
胆管粘膜から発生し、ほとんどが腺癌です。
やや男性に多く、黄疸で発見されることが多い。
膵・胆管合流異常症は、胆管癌を合併します。先天性胆道拡張症は32%と高率で、胆管非拡張型は7%と報告されています。
肝外胆管壁は粘膜層・線維筋層・漿膜下層の3層構造であり、線維筋層までにとどまるものが早期癌です。
肝門部領域と遠位では、手術方法(術式)が大きく異なります。ときに広範囲に進展する腫瘍もあり、術式の決定がとても難しく、また手術も広範囲の切除が必要になることが多く、難度も極めて高く、重篤な合併症が起きる危険性も高くなります。
胆のうがんよりも予後は良いとされます。

胆のうがんについて

胆のう粘膜から発生し、ほとんどが腺癌です。腺扁平上皮がん、扁平上皮がん、小細胞がんもありますが、まれです。
男女比は1:2で女性に多く、胆のう結石(胆石)を合併することが多い(50~80%)。
膵・胆管合流異常症は、胆のうがんを合併します。胆管非拡張型の88%、先天性胆道拡張症の 62%と非常に高率です。
無症状が多いのですが、胆石の症状で発見されることも少なくありません。
胆のうポリープで10mm以上、画像検査で大きくなるもの、大きさに関わらず広基性(すそが広い)の場合は、がんの頻度が高くなるため、手術を考える必要があります。
胆のう壁は粘膜層・固有筋層・漿膜下層の3層構造であり、固有筋層までにとどまるものが早期癌です。
リンパ節転移をきたし易く、腹膜播種を来すことも多い。
胆管癌よりも予後不良で、5年生存率は42%とされます。

十二指腸乳頭部がんについて

十二指腸乳頭部は、胆管の十二指腸壁貫入部から十二指腸乳頭開口部までのOddi括約筋に囲まれた部分をいいます。
乳頭部の胆管・膵管・共通管の粘膜から発生するがんで、胆道がんに分類されます。ほとんどが腺癌です。
黄疸で発見されることが多い。
Oddi括約筋内にとどまるものが早期癌です。
標準治療は膵頭十二指腸切除です。
縮小手術は、Oddi筋浸潤の可能性が低い癌、腺腫内癌、腺腫に対し適応となります。
内視鏡的乳頭切除は、腺腫のみに適応されます。
他の胆道癌よりも予後は良く、5年生存率は50~70%とされます。
リンパ節転移があれば予後は不良であり、5年生存率は30%まで低下します。

膵臓がんについて

部位は、膵頭部がんが多く60~70%、膵体尾部は30%です。
組織型は、浸潤性膵管がんが全腫瘍(良性を含む)の83%と最多で、次いで膵管内乳頭粘液腫瘍 (IPMN)、粘液性嚢胞腫瘍(MCN)、漿液性嚢胞腫瘍(SCN)などがあります。
膵神経内分泌腫瘍(PNET)(2%)、腺房細胞腫瘍(1%)、solid-pseudopapillary neoplasm(SPN)など、頻度は少ないが多彩な腫瘍が発生します。
浸潤性膵管がんは、膵がんの95%を占め、通常型膵がんといわれます。
初発症状は、腹痛が31%と多く、次いで黄疸18%、背部痛8%、糖尿病悪化5%などがあり、無症状も15%と多い。
診断時にはすでに肝臓や肺など遠隔臓器に転移しているStage lVbの症例が多く、この場合は手術の適応がありません。無理に手術しても、生存する時間は手術しない場合と変わらないか、合併症で生存期間が短縮する危険性もあります。
Stage IVaまでは手術の適応がありますが、膵臓に隣接する大きな血管につよく浸潤する場合は、手術不能と判断される場合も少なくありません。
手術を受けられたとしても、5年生存率は10~ 20%と予後は不良です。
がんの部位別死亡率では、男性の第5位、女性の第4位でした(2011年)。

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